(1) CSR推進の目的
当社では、1996年私の社長就任に際して、現行の経営理念(後掲)を制定しました。これは、企業の存在理由や社会的目的、経営に当たっての基本的考え方、基本的姿勢を示すもの、企業経営を行ううえでもっとも重要なものであり、仁張工作所が「継続して存続し続けるための進むべき方向、考え方、夢の源」と位置づけられています。「ポイントは短期的な利益よりも、長期的な利益を重視することに尽きる」と考えます。つまりすべての企業活動について「その活動が長期的な利益を生み、それによって会社が継続して存続し続ける可能性を拡大するか否か」を基準に判断するのです。
当社が主戦場とする板金加工の市場では、安価な中国製品が増えつつあり、「トップ10%に入らなければ生き残れない」という激戦が繰り広げられています。こうしたなか、当社は理念を実現すべく品質、環境と重点テーマを決めて取り組んできました。まず2000年の3月に品質管理のマネジメントシステムISO9002をコンサルタントに頼ることなく当社のスタッフによって取得しました(3年後のサーベランスの際に、ISO9001:2000に変更)。その成果が従業員の意識や製品に反映されてきたことから、次に環境保全への取組みに着手しています。2003年の6月に、環境省のエコアクション21のパイロット事業者として環境マネジメントシステムを導入し、活動を推進してきました。
メーカーは、技術を高め、よい製品を短納期に作り、出荷することが責務です。それを追及すると、品質と環境にたどり着きます。つまり、たとえば技能不足によって手直しや作り直しがあると、時間も材料もエネルギーも無駄になってしまいます。品質面の優劣は経営に直結し、環境負荷にも直結するというわけです。こうしたことから、経営と品質と環境は同じベクトルのうえにあり、本業としてそれらに取り組んできたのであり、たまたまそれがCSRの考え方に非常に近かったといえます。
また、当社のある東大阪市では不況のあおりから、工場を閉鎖してその跡地に住宅が建つケースが近年増加しており、職住近接が進みつつあります。地域環境の保全や地域社会とのコミュニケーションに十分配慮しなくては、事業活動ができなくなることも考えられます。そのため当社では、周辺の清掃、挨拶、地域の学校などの工場見学なども、積極的に行っています。
(2)
CSR推進の方法〜本業との連携をどう図ったか
前述のように、当社のCSRは本業の一貫としてスタートし、強力なトップマネジメントの元で推進してきました。テーマについては、大事なことから、できることから、基本的なことからまずやってみることをベースに、息切れすることなくスパイラル・アップを図ることを重視しています。また、活動計画と推進実務については、改革推進室という部門を新たに設立し、事務局を担っています。
当社のCSRの重点テーマは品質と環境ですが、それぞれについてISO9001(当初はISO9002)とエコアクション21のマネジメントシステムを導入しており、それらのPDCAサイクルを回すことによって日常の事業活動にビルトインした取組みを推し進めています。そして、双方の社内監査を担当するのは、管理責任者(リーダー)を一人が兼任することによって、品質と環境の両重点テーマを一体化することが可能になっています。
品質と環境についての全体目標は、部署別、チーム別、個人別の行動計画にまで細分化し、年間目標として全従業員に割り当てます。これらは、半期ごとに進捗状況をチェックし、問題点があれば所属部長と管理責任者が本人と討議することで達成の可能性を高めています。この背景には、「理念を浸透させることは大切だが、忙しい現場の人を動かすには仕組みづくりが最重要。そのために、できる範囲のシステム化を図ることが重要。できるようにすることが、事務局の仕事である」との考えがあります。
また、従業員の意識向上のために、環境月間の6月に、環境ポスターを募集するなどの活動も行っています。これには、全従業員の58%に相当する47名から応募がありました。
(3)
CSR推進上の課題
仮に今、これからCSRをやれ、と言われたら私でも二の足を踏むと思います。つまり、新しいことを始めようとすれば、カネも人もすべてが障害であり、できない理由になりえます。しかし、どんな障害があるにせよ、品質と環境が会社の存続にとっての重大な問題だと考えれば、障害は克服すべき通常の課題のひとつに過ぎないと、受け止めることができます。この発想に基づき、永続的に存在し続けるための投資として、経営リソースの強化を図るに至りました。
(4)
課題の解決策
まず手始めに、当社はISO9002をコンサルタントに頼ることなく自社のスタッフによって取得しました。それに引き続き、エコアクション21をパイロット企業として、補助金を利用して導入しているため、経費的な負担は最小限に抑えられています。
しかし、すべてが解決されたわけではありません。従業員に対するCSR意識の浸透度に濃淡が見られること、「情報不足」という障害があることなど、まだまだ課題はたくさん残っています。これらの点も、当社がCSRをさらに推進していくうえでの課題と考えられます。
(5)
CSRに取り組んだ成果
本業の一環としてCSRに取り組んでいる当社では、CSR の取組みは、品質の安定、生産性の向上、環境リスクの低減、地域との良好な関係の維持、従業員満足、顧客満足などを通じて業績の向上につながるものと認識しています。
そして現実に、品質面、環境面、営業面においてCSR活動に着手する以前に比べて顕著な変化が見られます。まず、品質面では、2000年に180件、2001年に169件であった顧客からの品質クレーム数が漸減し、2005年には93件にまで改善されています。また、品質意識の向上により、2001年に160件であった改善提案が2005年には1,045件に急増しています。次に、環境面では、グリーン調達に対する顧客の要望に応えるために、当社も、関係会社や取引先に対するグリーン調達ガイドラインを作ろうと、従業員が自発的に言い出したことが挙げられます。
最後に、営業面では、当社が成長を期待しているEコマースによる販売実績が、環境行動レポートをホームページに掲載し始めた2年の間で大きく伸びたことが挙げられます。ホームページでは、主に特注ものなどの新規顧客からの注文が多くあります。これらは、以前は多くても100〜200万円/月に過ぎなかったものが、今では年間1億円に届く勢いです。背景としては、以前からアピールしていた技術面の優秀さに加えて、環境保全を始めとするCSRに対する姿勢が評価されていると考えます。
(6)
経営理念等による経営者のコミットメント
当社の経営理念と、それに対する当社の考え方を示します。
「ここに示す経営理念は、2代目社長が会社を継ぐに当たり、全社員に発表した我が社の経営理念です。
・私達は板金加工を通じて良い商品を社会に提供し、安全で快適な生活空間を創造します。
・私達はお客様の満足を通じて仕事に誇りを持ち、より良い生活を実現し、働きがいのある会社づくりに努力します。
・私達は常に新しい板金加工技術について積極的に学び、自分たちのものとし、共有化することによって、技術レベルの高い信頼される会社をめざします。
経営理念とは、
・その会社の存在理由や社会的な目的は何か。
・経営にあたっての基本的な考え方とは何か。
・企業の基本的な姿勢とは何か。
を示したものです。
『経営理念』の『理念』の意味は、理性によって到達する最高の考え方、根本的な信念ということです。
つまり、仁張工作所がこれからも継続して存続し続ける為の進むべき方向、考え方、夢の源であります。私達は、求人採用の際にも選考段階から経営理念について説明し、理解していただける方の中から仲間を迎えることとしており、常により高いレベルで経営理念を具現化して行きたいと考えます。」
(7) 2005年度環境レポートによる経営者のコミットメント
EA21に基づく 2005年度環境レポートで、次のように私のコメントを記載しています。
「2005年度の環境レポートを発表できてうれしく思います。当社にとってエコアクション21認証取得活動からの環境に対する取組みは、始まったばかりで、一言でいうと『環境に対して意識が芽生えた一年』でした。
設定すべき目標値も、過去のデータがほとんど無いので、皆で相談し、多少「ええかっこ」もして決めたものの、中には見当はずれの数字も出てしまいました。そんな中で、地域と共に頑張らんといけない中小企業こそ環境についても一所懸命取り組まないといけないかなって思えるようになりました。
当社は2004年を環境元年ととらえ、現在の到達点からまた次の取組みを進めていきます。」(2004年3月)
EA21に基づく 2005年度環境レポート
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